
日本国内でも大手企業の製品上陸に伴い注目を集めつつあるAI音声アシスタント搭載スピーカーだが、中国市場では一足先にテック大手による開発競争が過熱している。
2017年7月、中国の電子商取引(EC)最大手アリババグループが、AI音声アシスタント「AliGenie」を搭載したスマートスピーカー「Tmall Genie(天猫精霊)」を発表。音声による音楽再生やアラーム設定だけでなく、アリババのECプラットフォーム「Tmall(天猫)」と連携したスマートショッピング(音声注文・決済)に対応している点が最大の特徴だ。Amazon Echoと同等以上の機能を備えながら、499元(約8,340円)という極めて戦略的な低価格に設定されたことで大きな話題を呼んだ。
これに対抗するように、総合家電・スマートデバイス大手のシャオミ(Xiaomi)も、独自の音声アシスタントを搭載した「Mi AI Speaker(小米AI音箱)」を発表。かつてテンセント(Tencent)が音声アシスタントを搭載したペンギン型のコミュニケーションロボット「QRobot」を発売した事例を含め、中国の各メガテック企業は独自の対話型AI技術(ボイスAIエージェント)をコアとしたエコシステム構築を急いでいる。
中国では、コンビニの商品などを即座に届けるオンデマンドデリバリー「Ele.me(餓了麼)」や、スマートロックとGPSを搭載しスマホ決済でどこでも乗り降り可能なシェアサイクル「Mobike(摩拝単車)」など、モバイルインフラを前提としたサービス(O2O)が日本を遥かに凌ぐスピードで社会実装されてきた。こうした高度なデジタルサービスのエコシステムを背景に、対話型AIエージェントを家庭内のハブにする動きが急速に進行している。
特にAI技術やディープラーニング(深層学習)の研究開発では、検索大手のバイドゥ(Baidu)が先行している。米エヌビディア(NVIDIA)との協業を通じて自動運転やAIアルゴリズム開発を加速させている同社は、極めて高い音声認識性能を誇るアルゴリズム「Deep Speech」を開発。これを搭載したAI対話型ファミリーロボット「Little Fish(小魚在家)」を発表したほか、100種類以上の声質や多様なアクセント・方言を瞬時に使い分けられる高度な音声合成技術「Deep Voice 2」の実用化に成功している。バイドゥの対話型AI技術は、多言語や複雑なアクセントを処理する能力に優れており、今後の製品開発における強力な差別化要因となる。
また、対話型AIエージェントの利用シーンとして欠かせない音楽ストリーミングサービスを巡っても、中国テック各社のライセンス獲得競争が激化している。アリババ傘下の「Xiami Music(蝦米音楽)」は、ワーナーミュージック、ソニーミュージック、ユニバーサルミュージックの世界3大レーベルとライセンス契約を締結。一方、テンセントが展開する「QQ Music(QQ音楽)」もユニバーサルミュージックとの独占的ライセンス提携を発表した。QQ Musicの月間アクティブユーザー数はすでに4億人を超えているとされ、中国の音楽配信プラットフォームが世界のデジタル音楽産業に与える影響力は無視できない規模に達している。
これらのハードウェアおよびAIアシスタント機能は、まず中国国内市場向けに最適化して展開されるが、今後さらにアルゴリズムが洗練されることで、グローバル市場における対話型AIの覇権争いにも中国企業が深く関与してくることは確実だ。
情報源:Real Sound
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