中国の山東省にある小さな農村において、伝統工芸である柳編みのインテリア雑貨を熱心に製作する農民たち。その作業場の壁には、「農村淘宝(農村タオバオ)への加入歓迎」と書かれた赤いスローガンや看板が誇らしげに掲げられている。
中国では、村の全世帯数の10%以上がアリババ傘下のショッピングサイト「淘宝網(タオバオ)」にネットショップを開設し、その村全体の年間EC取引額が1,000万元(当時のレートで約1億6,500万円)以上に達する地域を「淘宝村(タオバオ村/Taobao Village)」と呼んでいる。
例えば、山東省浜州市博興県錦秋街道にある湾頭村では、伝統工芸の柳編み家具や生活雑貨のEC販売が大ヒットを記録。2016年のオンライン売上高だけで3億元(約50億円)に達した。また、四川省南充市西充県鳳鳴鎮の双龍橋村では、オーガニック農業や農村観光(アグリツーリズム)とECを掛け合わせたビジネスモデルを構築。地元の民宿や農産品のオンライン予約・販売が急増し、中国国内のみならず多くの外国人観光客も訪れる名所へと変貌を遂げた。
こうした「淘宝村」の出現と急増は、電子商取引(EC)が旧来の閉鎖的な中国農村経済に革命をもたらし、農民の所得向上や地方経済の活性化を強力に牽引している明確な証左である。中国農業部(現在の農業農村部)の試算によると、2016年の中国全土における農産品のオンライン取引総額は、前年同期比46%増の2,200億元(当時のレートで約3兆6,300億円)という巨額の規模に到達した。
また、淘宝網を展開するアリババグループ(阿里巴巴集団)のシンクタンクである阿里研究院が公表した最新レポートでは、中国全土の「淘宝村」の数はすでに1,311ヶ所に達しており、農村部で直接・間接を合わせて84万人分以上の新規雇用を創出していると報告されている。
地方開発や物流の専門家は、「農村部へのブロードバンド通信の普及と、それに伴う宅配・物流ネットワークの劇的な整備により、これまで『情報の非対称性』や『高額な配送コスト』によって都市部から切り離されていた辺境地域の発展ポテンシャルが一気に解放された。これにより、都市の消費者がスマホ一つで全国どこからでも新鮮な農産品や伝統工芸品を直接購入できるようになった」と分析する。
インフラ整備の遅れ、低所得、そして魅力的な産業の欠如は、長年にわたり中国農村の深刻な課題であり、これが都市部への若年労働力の過度な流出(出稼ぎ問題)を招く主な原因であった。
しかし、農村ECの勃興は、地元産業の高度化、雇用の創出、そして余剰労働力の有効活用という面で画期的な成果を上げている。中国政府が推進する農村振興プロジェクトの支援も追い風となり、都市部からUターンして地元でEC起業に挑戦する若者が急増。統計によると、農村ECの発展により、大都市へ出稼ぎに出る労働者の数が約1,200万人減少したとされており、社会的な人口バランスの是正にも大きく寄与している。
情報源:人民網
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