大普微、2025年に245TB対応のQLC企業向けSSD「R6060」発表
大普微(Dapustor)は、2025年12月6日に第二世代QLC企業向けSSD「R6060」を発表し、最大容量245TBという記録的なスペックを実現した。PCIe 5.0×4インターフェースと自社開発コントローラを搭載し、AI時代の大容量データ保存ニーズに応える姿勢が注目されて…

大普微(Dapustor)は、2025年12月6日に第二世代QLC企業向けSSD「R6060」を発表し、最大容量245TBという記録的なスペックを実現した。PCIe 5.0×4インターフェースと自社開発コントローラを搭載し、AI時代の大容量データ保存ニーズに応える姿勢が注目されている。
QLC SSDが企業向けに選ばれる背景
従来、QLC(Quad-Level Cell)は書き込み耐久性や書き込み増幅(Write Amplification)といった課題から、エンタープライズ向けストレージとしては敬遠されてきた。TLC(Triple-Level Cell)やSLC(Single-Level Cell)に比べ、1セルあたりのビット数が多いため、同等容量であればチップ数が削減でき、コストと電力効率が向上する利点がある。
しかし、データセンターやAIクラスターでは、膨大な「温データ」(頻繁にアクセスされるが、長期保存が必要なデータ)を高速に処理・保存する必要がある。QLCはTLCに比べてストレージ密度が高く、機械式ハードディスクに比べて消費電力が低く、ランダムIO性能も優れているため、こうした用途に適合しつつある。
大普微R6060の技術的特徴
R6060はPCIe 5.0×4(レーン4)インターフェースを採用し、理論上最大読み取り速度が約7,000 MB/s、書き込み速度も同等水準に近い性能を提供する。コントローラは自社開発のDP800で、PCIe 5.0に最適化されたアーキテクチャを持ち、TLCベースのSSDに匹敵するレイテンシとスループットを実現している。
さらに、FDP(Fine-grained Data Placement)技術を導入し、書き込み増幅を大幅に抑制。これにより、百TB規模のデータセットでも耐久性と性能が安定し、エンタープライズ用途で求められるMTBF(平均故障間隔)やDWPD(Day Write Per Day)指標を満たすことが可能となった。
実際に、122TBバージョンは既にエンドユーザーに導入され、運用実績が確認されている。これに続く245TBモデルは、現在プロトタイプ段階であり、量産化に向けた最終テストが進められている。
AI時代のデータ構造変化とQLCの役割
AIモデルの学習や推論に伴うデータは、従来の「冷データ」から「温データ」へとシフトしている。大規模言語モデルや画像認識モデルでは、学習データだけでなく、推論時に生成される中間結果やキャッシュデータが頻繁にアクセスされるため、ストレージのIO性能と容量が同時に求められる。
このような背景から、過去10年間にTLCが支配的だったeSSD市場は、SLC/TLCとQLCを組み合わせた階層型アーキテクチャへと急速に移行している。上位層は低レイテンシと高耐久性を提供し、下位層は高密度・低コストで大量データを保持するという役割分担が明確化されつつある。
中国市場におけるSSD競争と大普微の位置付け
中国国内では、長江存储(YMTC)や紫光集团などがNANDフラッシュの製造でシェアを拡大しており、QLCの量産化も進んでいる。大普微は、これらのメーカーと提携しながら、独自のコントローラとファームウェア最適化で差別化を図っている。
同社が以前に発表したJ5000シリーズは、30.72TBおよび61.44TBの容量を提供し、エンタープライズ向けに一定の評価を受けた。R6060はその技術的蓄積を踏まえ、容量と性能の両面で大幅にステップアップした製品である。
今後の展望と課題
R6060の量産化が成功すれば、AIデータセンターや大規模クラウドサービスにおけるストレージコスト削減とエネルギー効率向上に寄与することが期待される。一方で、QLC特有の書き込み耐久性に対する長期的な信頼性評価や、PCIe 5.0対応サーバーの普及速度は、導入ペースに影響を与える可能性がある。
大普微は、製造プロセスの微細化とファームウェアの継続的なアップデートに注力し、QLCの課題を技術的に克服し続ける姿勢を示している。業界全体としては、ストレージ層の多様化が進む中で、QLCがエンタープライズ市場で本格的に受容されるかどうかが注目点となるだろう。
まとめ
大普微が発表した第二世代QLC企業向けSSD「R6060」は、245TBという前例のない容量とPCIe 5.0×4の高速インターフェースを備え、AI時代の大容量データ保存ニーズに応える画期的な製品である。自社開発DP800コントローラとFDP技術により、耐久性と性能のバランスを実現し、既に122TBバージョンが実装実績を持つ点も評価できる。中国のフラッシュメモリ産業全体がQLCの量産化に向けて加速する中、大普微の取り組みは国内外のエンタープライズ市場に新たな選択肢を提供する可能性を秘めている。